子どもの「こころの声」を訊いて、引き出すことができたら…
子どもの「こころの声」を訊いて、引き出すことができたら……(後編)
次の日、M子さんが塾に来ました。「先生、先生、聞いてよ。昨日塾でやったのと同じような問題がテストにいっぱい出てた。昨日、やっぱり勉強して良かったわ」とテスト用紙を早く見てと言わんばかりに私の前に持ってきました。そして、今まで志望高を聞いても「まだ、よくわからない。考えてないもん」と言っていたのに真面目な顔で「先生、私、R高校に行きたい。実は前から興味あったの。5科目合計で何点取ったらR高校に行けるの?」とたずねてきました。
「R高校だったらこれぐらいじゃない。」と点数を伝えると「そうなん。わかった。じゃあ夏休みは頑張ろうかなあ。」と答えてくれたので「担任の先生に面談のときに自分はR高校に行きたいと伝えたほうがいいと思うけど」とアドバイスしました。
すると次の日にM子さんは担任の先生に自分の気持ちを伝えたそうです。さて、肝心の理科の点数はどうだったかというと、2年生のときよりも格段に点数が上がっていました。本人はきっと満足していると思いましたが、M子さんは「先生、理科は取れたけど英語が難かしくて思ったように点数が取れなかったわ。もっと勉強しとけばよかった」とテストが終わってからも何回も悔しそうに話してくれました。今までとは違うM子さんの姿にちょっと感動しました。
もちろん、これから実力テストが続き自分の志望校に合格できるには試練が待ち受けていると思います。ただ、M子さんは無理だと投げてあきらめずに、一歩踏み込んで苦手な科目も忍耐力を持って取り組むことで彼女の心の中にあった志が立ち上がったように思います。子どもたちの表面上の態度で判断せずに、「本当は頑張りたい」と誰もが思っていると信じることの大切さをM子さんと関わって改めて確信しました。