塾生に教えられて……

塾生に教えられて……
 大学受験のために入塾してきた高3のD君の印象は、明るいけれど自分が本当は何がしたいのかが定かではない生徒さんでした。工業高校に在学しているD君は「工学部でどこか僕のレベルで行ける大学があればいいんですけど。」と言うだけでした。
そんなD君と一緒に勉強する中でこんな話をしてくれました。
「僕、たこ焼き屋さんでバイトをしてるんですけど、こないだ耳が不自由な方がお店に来た時、手話を話せたらその人と話ができるのにと思ったんですよ。町を歩いていても障害をもった人を見かけると何かできることないかなあと思っちゃうんですよ。」
その話を聞いた時、D君ってすごいなあと思い、「その気持ちってきっと君がしたいこととつながってるんじゃない?」と伝えました。そうするとD君は「僕、実は福祉にも興味があるんです。でも今からでは、福祉関係の大学に進学するって難しいですよね」と話してくれました。ところが、しばらくたってD君がうれしそうに「先生、来年、A大学に福祉工学部という学部が新設されるんです。僕、この大学を受けようと思います。」と報告してくれました。
将来、やりたいことが決まったD君はやる気が出てきてもちろん希望通り、A大学に推薦入試で無事合格することができました。このことをきっかけにD君は何事においても積極的になりました。
小学生の時は、授業中、一度も手をあげたことがなく、中学生の時は、クラブ活動においても自分から意見を言ったことがなかったそうです。そのD君が何と新潟地震の被災者の所へボランティアに行く事を決めて、学校の先生にも届けを出したと話してくれたときは驚きました。
「阪神神戸大震災の時、僕は小学生で何も出来なかったんです。その時ボランティアの人たちの活動を見ていて、大きくなったら僕もやってみたいとずっと思っていたんです」と自分の気持ちを話してくれるD君の顔は輝いていました。
 本当に自分のしたかったことが見つかった時、必ず道が開かれていくこと、そして人は変わっていくことをD君の姿から教えてもらいました。

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