人は必ず成長する存在-3
人は必ず成長する存在-3
では、次に本当はどうなりたいのか、どうしたいのかを聞いていきます。
E子さんの場合なら、あれもしなければこれもしなければと心の中で焦るだけで今できることを実際はしていないことから「今」に集中することの大切さを思い出してもらいます。
E子さんにとってこの「自分のこころを見つめるシート」に取り組みながら越えなければならないハードルはいくつか明らかになってきました。
一つは家族や学校の先生との関わりにおいて出てくる「私のことを誰もわかってくれない」とすぐに思う感情をコントロールすることでした。
「本当に、あなたが思うように皆はわかってくれていないの?」
彼女が話す一つひとつに対して、そう問い返していく課程で彼女自身が現実の世界ではなく、まるで幻想の世界の中で独り相撲をとっていることに気づけるかどうかでした。
自分の願いは何か、そのことを何度も自分に問いかけることであり、それによって心に中心軸を作り周囲の言葉に動揺しなくなってきました。
次に、入試勉強と学校の授業やクラブ活動の両立でした。何事にも完璧主義な彼女は学校の宿題や課題も必ず提出しないと気がすまないタイプです。
ですから、しばしば徹夜に近い日々が続き体調を崩す時もありました。
その上、理科系の科目が苦手という不安から予備校や塾をかけもちするとの選択もしようとしました。私は本人にとって負担がかからないように、家から近くて幼い時からお世話になっている塾や家庭教師を勧めました。
もちろん、私の塾には通えないので電話、メール、FAXを使った指導にしました。この中には悩み相談ありです。
そして、国語の論文を教える時は、あくまで彼女が主役だということです。
最初は確かに文の構成をこちらがリードし、半分以上は添削しました。
しかし、だんだんとE子さんが考えていることを聞き、自分の言葉で表現してもらうようにしました。
そうすると彼女の方から自分の考えをどう表現するかこだわるようになり、最後の方は「私が書いてみてから先生みてね。」という具合になり、難しい大学の国語の入試問題も自分の力でまとめることができるようになりました。
その間、私が意見を言っても自分の感覚と納得しないと自分の意見を率直に言うように変わり、その実力が学校でも認められて、感想文コンクールに応募するようにと学校の先生からの要請もあり、ますます文章を書く機会が増えていったことも大きかったと思います。
もちろん、すてきな内容には、かならずほめるようにしました。
そして、推薦入試を控えた最後の1週間は、自分を信じてもらうことでした。
今まで塾の先生や家庭教師の先生がどれほど自分の無理を聞いてくれていたか、
学校の友だちがいつも自分の愚痴を聞いてくれていたこと、そしてお母さんが心配もあって、やせてしまった事、その全てが自分を支えてくれていることをしっかり心に置き、
だからこそベストを尽くすことだけを考えてほしいと伝えました。
(つづく)